それは家族が集まって、いっしょにご飯を食べる習慣である。
本来家族が全員で食事をとる機会は、1日に2度、朝食と夕食がある。 これから家を出る間際の朝食と違って、夕食には1日の仕事を終えたあとのやすらぎを求める落ち着きがある。
結婚は金のかかるものだということも覚悟しておかなければならない。 結婚について書かれた英語の手引書では、その冒頭に、「マリッジ・コスト・モア・ザン・カー」とある。

結婚は車を買うよりも金がかかるものだ、というのである。 単身赴任の妻の場合も、夫のもとに1年に何度も飛行機で帰ってくれば、相当のコストがかかる。
外で落ち合ってレストランで食事しても、ホテルを予約しても、やはり馬鹿にならない金がかかる。 車どころではない。
夜早めに家に帰って食卓を囲むことがむずかしいのであれば、それに代わる機会を意識的につくる必要がある。 妻に食事の支度をする余裕が失われたとするなら、お互いの時間を合わせてレストランで食事をする回数を増やす。
休暇がとれたら、夫婦で旅行に出る。 休みがわずかしかとれなければ、ホテルに1泊してディナーをとるだけでもいい。
そうやって意識的に友愛関係を維持していくための、金と時間は惜しまないほうがいい。 ローマは1日にしてならず、だと自分にいいきかせるのである。
私はよく若い人たちに、「結婚は第二の職場である」といっている。 結婚して配偶者に腹を立てるのは、結婚が憩いの場だと思い込んでいるからである。
そうではない。 昨日まで他人だ夫婦ないしは家族が日常行動をともにするほぼ唯一の機会であり、コミュニケーションの場でもある。
できれば、これだけは何としてでも維持するのが望ましい。 しかし現状は、家に帰って先に電灯をつけるのが夫であることも珍しくなくなっている。
玄関の戸を開けたら夕食の支度ができている時代ではもはやない。 仕事をもつ女性も増えている。
勢い家族が揃って食卓を囲む習慣は失われることになる。 そのことによって、かつてはどこにでも見られた潤いのある家族も減っていくことだろう。

そういう意味では、家族みんなで食卓を囲むというイメージは断じて捨ててはならないのであって、男女が共同生活を営む以上、お互いが努力し、知恵を絞り、時間と金をつかって、うまくやっていかなければならない。

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